現場の消防法を元消防署長が解説! 消防設備って必要?【第3回】「点検で不備が出たら? 立入検査での指摘と改善計画の進め方」

現場の消防法を元消防署長が解説

前回の第2回では、消防設備の「点検」と「消防署への報告」の仕組みについて解説しました。

消防設備士などが点検を実施すると、機器の経年劣化や内装変更などで「不備」が判明することがあります。また、消防署の『立入検査(査察)』の際、消防設備の不備を直接指摘されることもあります。

「不備が出たら、すぐ高額な改修工事をしなければいけないの?」「立入検査で改善計画書の提出を求められたらどうすればいい?」

今回は、点検報告や立入検査で不備が見つかったあとの「改修(是正)の流れ」「改善計画書の具体的な考え方」「消防署との事前協議」について、元消防署長の目線で分かりやすく解説します。

📌 この記事の重要ポイント
  • 点検や立入検査(査察)で指摘を受けた不備は放置せず、内容に応じた「優先順位」をつけて計画的に改善する。
  • すぐに改修工事ができない場合は、期限や進め方を事前に相談・調整することが不可欠です。調整後に「改善計画書(是正計画書)」を消防署へ提出する。
  • 設備の改修工事を行う際は、工事内容によっては建築士なども協議に入る必要なこともある。また、消防設備士による「着工届」や関係者からの「設置届」が必要となることもある。

1.消防設備の不備(指摘事項)にはどんなものがあるか?

① もっとも多い不備

消防設備の点検および報告
消防設備自体の不備ではなく、【第2回】の点検・報告に関する未実施が最も多いです。逆に、点検・報告がなされていると、防災業者や消防署から改修を指摘されるため、消防設備自体の不備も少なくなります。

② 比較的にすぐ対応可能な不備

物品障害: 誘導灯や消火器の前に荷物(障害物)が置かれている、自動火災報知設備の感知器の警戒範囲を遮るパーテーションの配置など(立入検査記事で触れた「速やかな物品の除去」の具体例)。これらは、「防火管理」として指示されることが多いと思います。

主な不備: 消火器の能力(設置)単位数の不足(※)、誘導灯の球切れなど

※消火器の能力単位とは:消火器の消火性能を示す数値指標で、消防法ではこの能力単位を用いて消火器の設置数が決まります。

③ 専門業者との調整や工事が必要な不備(計画的対応が必要な項目)

設備の老朽化・動作不良: 自動火災報知設備の感知器や受信機の不具合、屋内消火栓設備・スプリンクラー設備の配管・ポンプからの漏水

④ 重大な消防法令違反の公表制度

百貨店、飲食店、物品販売店舗、ホテル、病院、社会福祉施設など、不特定多数の方が利用する建物や、避難が困難な方が利用する施設などにおいて、消防法令で設置が義務付けられている自動火災報知設備、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備が設置されていない場合など、重大な消防法令違反がある建物について、その名称や違反内容などを消防本部等のホームページで公表する制度です。

💡 ポイント!

この重大違反ですが、実は意外に容易になることもあります。例えば、大きな敷地に、お店(消防法上の(4)項)が2軒立っていたとして、渡り廊下などでつなげてしまい、延べ面積が屋内消火栓設備の設置基準の面積以上となった場合、屋内消火栓設備が必要(義務)となります。

「公表制度」に基づく公表のほか、消防署は「行政指導・処分」を視野に違反処理に動き出します。簡単な増築でも十分に注意が必要です。

詳しくは、以下をご覧ください。

2.不備指摘から改善までのステップと「改善計画書」のポイント

① 【ステップ1】指摘内容の整理と対応期限の確認

消防署からの立入検査(査察)による「改善計画書」や、消防設備の「点検結果報告書」の不備内容を確認する。

② 【ステップ2】消防署への「改善計画書(是正計画書)」の作成と提出

立入検査の記事でも解説した通り、改善計画書は単に提出すること自体が目的ではありません。

予算や専門業者との工事日程調整に時間がかかる場合は、実施時期(いつまでに・どのように改修するか)を具体的に記載し、実現可能な計画を立てて消防署へ提出します。「適当にこのぐらい」は、消防はすぐに「やる気がない」と見抜きます。

③ 【ステップ3】改修工事の実施と届出

工事を行う際は、内容に応じて消防設備士により「工事着工届」、関係者により「設置届」を消防署へ届け出て、工事完了後に消防署の現場検査(設置検査)を受けます。

3.改修のための事前相談・協議

① 改修は、オーナー一人でできないことが多い

消防設備は、家電とは違い特殊なものです。よって、お店のオーナー様ひとりで改修させることが難しいのが現実です。

消防設備の点検を行っている防災業者などに相談し、時には、建築士なども入ってもらい、改修に向けてのスケジュールを立てる必要があります。「消防からの指摘事項がよくわからない。」「いい解決方法はないか。」とお困りであれば、それらをトータルしてサポートする、消防特化行政書士に相談されるのも一つの手です。

② 「お金がない」は通らない

重大な消防法令違反を指摘され、改修に多額の費用がかかるため、そのまま放置していたらどうなるでしょうか。

いわゆる「お金がない」というケースです。しかし、違反の内容や危険性によっては、消防は行政指導にとどまらず、命令などの行政処分に踏み切ることもあります。それは、建物の危険性を知らずに利用する人々を、火災による被害から守るためです。

消防の目的は、決して「処罰すること」ではありません。建物を利用する人の生命・身体と財産の安全を確保することです。

「お金がないから改修できない」という事情があったとしても、それだけで違反が容認されるわけではありません。営業に必要な費用をかける一方で、安全を確保するための費用を後回しにしていないか、改めて考える必要があります。

改修に時間や費用がかかる場合は、消防の担当者と継続的に協議し、具体的な改善計画書を提出するなど、計画的に違反の是正を進めることが重要です。大切なのは、違反を放置することではなく、利用者の安全を守るために、改善に向けて具体的に行動することです。

【消防署予防係長時代の回想録】

部下が立入検査に向かって約1時間後、「ちょっと大変なんです」と電話があり、現場へ出向しました。

鉄筋コンクリート造4階建ての複合用途防火対象物で、屋内階段には大量の可燃物が放置され、さらに、2階から3階に通じる階段やベランダの増築も確認しました。

階段の可燃物は消防法第5条の3に基づく命令の対象となり得るものでしたが、当時は現場で命令を発することも少なく、オーナーに「夕方までに除去するように」と伝えました。しかし、完全には除去されませんでした。また、増築によって屋内消火栓設備の設置が必要となり、厳しい行政指導を進めることになりました。

当時は違反処理の実績も少なく、違反公表制度もない中、行政指導で改修を促すしかなく、「指導の限界」を感じることもありました。

現在は、行政処分を視野に入れた違反処理が進められ、オーナーも違反の重大性を認識し、早期是正につながるケースが増えています。今振り返ると、当時は本当に大変な時代だったと感じます。

まとめ|早期に不備の確認と事前の協議を
  • 点検や立入検査で不備が見つかったら、放置せず内容を正しく把握する
  • 改修に時間がかかる場合は、消防署や専門家と事前相談を行い「改善計画書」を提出する
消防設備の不備指摘や、改善計画書の作成でお困りではありませんか?

「立入検査で指摘を受けたが、どう進めればいいかわからない」
「改善計画書の書き方や消防署との協議方法を相談したい」
「防災業者や建築士と連携して改修を進めたい」

消防行政の実務経験をもとに、行政書士石川勝事務所が丁寧にお話を伺います。

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